最近何も楽しくないし、気持ちが晴れない。これってうつ病なのかしら?
うつ病って診断されたけど、どうやって治療するんだろう?
うつの原因ってなに?
今回はうつ病について、症状・診断・原因・治療をわかりやすく説明します。
うつ病とは
気持ちの落ち込み、やる気の低下、眠れない、疲れがとれないなど、様々な体の症状がなかなか治らずに続く病気です。
精神科の病気の中ではとても多く、
生まれてから死ぬまでに、
- 男性の約10人に1人(11.0%~12.6%)
- 女性の約5人に1人(14.8%~21.3%)
が発病し、女性の方が男性の約2倍かかりやすいという特徴があります。
うつ病の患者さんはとても多く、誰でも病気を発症する可能性があります。なってしまったからと言って、恥ずかしいことではないですし、自分を責めたりしないでくださいね。
また、治ってからも再発する患者さんが多いというのも特徴です。
うつ病の具体的な症状
うつ病では、気持ちの症状ばかり注目されがちですが、からだにもいろいろな症状がでます。
うつ病の診断・セルフチェック
以下の項目のうちいくつかが、最近2週間にみられる場合はうつの疑いがあります。
お近くの精神科を受診するようお勧め致します。
これってうつ? うつの症状は健康な人でも出ることに注意。
「うつ病の具体的な症状」で説明した症状は、健康な人でも出ることはあります。例えば、仕事で失敗をして、上司からみんなの前でひどく怒られた場面をイメージしてみてください。
こんな事があれば、
- 自分ってダメだなぁ。
- 好きなランチで気分転換しようとしたけど、あんまり味を感じなかったな。
- 寝る前に思い出して、眠れなくなってきた。
といった症状が出ますよね。
でも健康な人なら、この状態が続くことはありません。数日もすれば、
- 落ち込んでてもしょうがない。
- 次の仕事で見返そう。
- 仕事とプライベートは別。週末のデートが楽しみ♪
と、元の状態に戻っていきます。
一方でうつ病の場合は、元の状態に戻らず、ずーっと落ち込んだ状態が続くことが違いです。
うつ病になりやすい考え方・性格
ストレスを抱え込みやすい考え方や性格傾向は、うつ病になる危険性を高めます。
具体的には、
・・・など
これらの傾向を持つタイプの人は、毎日が問題ない範囲で過ごしている間は、
まじめでしっかり仕事をしてくれる方だなぁ。
など、周囲からの評価が高い一方で、柔軟に対応することは苦手という特徴もあり、
- 職場の昇進
- 職場の配置換え
- 結婚や引っ越しなどプライベートな問題
などのきっかけで、
あれもこれもしっかりやらねばならない・・・
と優先順位をつけられなくなって、大きなストレスを抱え込んで病気になってしまう危険性があります。
うつ病の原因
うつ病の原因は、完全にはわかっていませんが、
- 遺伝的要因
- 心理的・社会的要因
などが複雑に関係して発病すると考えられています。
遺伝的要因
うつ病の発病には遺伝が関係していると考えられ、
発病には
- 30~40%は遺伝的要因
- 60~70%はその他の要因
によると、遺伝研究からは考えられています。
詳しくは、このホームページの以下のリンクをご参照ください。うつ病と遺伝について詳しく解説しています。
なお、うつ病とよく似た症状の躁うつ病(双極性障害)という病気は、遺伝の影響がうつ病よりはるかに大きいです。
心理的・社会的要因
心理的・社会的要因としては、
- 生活上のストレスとなるような出来事
- 社会的な孤立
- 周りからサポートを十分に得られない環境
などが挙げられます。
生活上のストレスとしては、
- 大切な人を失う。
- 仕事を失う。
- 過労
など、辛い体験や悲しい出来事だけでなく、
- 結婚
- 昇進
- 進学
- 引っ越し
など、悲しくない出来事も含まれます。
うつ病の治療
うつ病は、「遺伝的要因」「心理的・社会的要因」「本人の考え方・性格」が複雑に絡み合って発病します。
このうち、治療で介入できるのは、
- 心理的・社会的要因
- 本人の考え方・性格
の2つです。
心理・社会的要因の治療
ストレスからうつ病になると、人間の脳でセロトニンという物質が減ることが分かっており、このセロトニンを、
- 減らないようにストレスを取り除いた環境にする。
- 減ってしまった分を薬で補充する。
という視点で治療していきます。
詳しくは、以下のページで図にして分かりやすく解説しています。
考え方・性格の治療
こちらは、カウンセリングが中心になります。
治ったとしても、同じような環境で再発しないように、完璧主義などうつ病になりやすい本人の思考パターンや行動パターンを見直していきます。再発予防のために重要です。
今回はうつ病の説明でした。とても多い病気で、早めに治療することが肝心です。セルフチェックに該当するようでしたら早めにお近くの精神科を受診することをお勧めします。
このホームページでは、出来るだけわかりやすく心の病気について説明していますので、他の記事もぜひ読んでいただき、病気の理解を深めてもらえれば幸いです。
資格
・日本精神神経学会認定 精神科専門医
・厚生労働省認定 精神保健指定医
・日本医師会認定 認定産業医
・厚生労働省認定 麻酔科標榜医
・日本麻酔科学会認定 麻酔科認定医(2017年~2022年迄)
略歴
愛知県立明和高校卒業後、山梨大学医学部医学科へ進学。卒業後は豊田厚生病院での研修を経て名古屋大学精神科へ入局。その後、大学の関連病院で勤務の後、2022年に大曽根駅前こころのクリニック院長就任。
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