初めて精神科を受診すると、
も~う! なんでそんなプライベートな質問するの!? 怒れてきちゃうわ!
って思うような意外な質問をされて、不愉快に感じてしまう患者さんもいるかと思います。
今回は、なぜ精神科医が初めて受診する患者さんにそんなプライベートな質問をするのか、その理由を説明していこうと思います。
受診する前から、質問される事とその理由ついて知っていれば、変に緊張してしまうことも減ると思います。
質問1 何人兄弟など、家族のこと。
- 何人兄弟(姉妹)などの家族構成
- 出身地
- 1人暮らし or 同居?
- 近所に家族は住んでいますか?
といったことをお伺いすることがあります。
理由:病状が悪化したときに、頼れるキーパーソンの確認のため。
病状が悪化した時に、1人暮らしなのか、同居の家族や近所に頼れる家族がいるのかの違いは大きいです。また、出身地が北海道や沖縄など、クリニックの立地から遠い場合は頼れる人が少ない可能性も考えます。同居の家族がいれば外来治療を選択出来るし、同居の家族がいなければ入院を勧めるなど、対応が変わる場合があります。
質問2 血のつながった家族に心の病気はありますか?
- 兄弟姉妹、両親、祖父祖母など血のつながった家族に心の病気の方がいますか?
- いる場合は病名はご存知でしょうか?
といったことをお伺いすることがあります。
理由:遺伝が影響する心の病気があるため。
心の病気の中には遺伝性があるものもあります。
また、うつの症状で受診した患者さんであっても、血のつながった家族に躁うつ病(双極性障害)の方がいる場合は、躁状態がないことの確認の重要性が増します。
質問3 生まれた時のことや、健診の異常の有無、過去の大きな病気やケガの有無について。
- 早産 or 正期産。
- 産まれてすぐ入院するようなことはございましたか?
- 1歳児健診、2歳児健診、3歳児健診などで異常はございましたか?
- 過去に大きな体の病気やケガをしたことはございますか?
といったことをお伺いすることがあります。
理由:今までの脳へのダメージの確認のため。
「心」の病気と言われるものには、「脳」の機能が影響しているものが多くあります。
早産や産まれてすぐに呼吸状態が悪くて低酸素状態で入院したり、交通事故で脳出血を起こしているなど、今までに脳に大きなダメージを受けるような事がなかったかを確認する事がございます。
質問4 学校での生活や成績、職歴について。
- 不登校の時期はあったか。
- 学校での成績や得意科目と苦手科目。
- 小学校、中学校、高校、大学の名前など学歴。
- 職歴や転職理由。
といったことをお伺いすることがあります。
理由:元々の患者さんの機能を推定するため。
病院を受診するのは調子が悪い状態です。
不調になる前の患者さんの元々の能力と比べて、受診した時の状態はどれくらい下がっているのか?
また、過去に不登校や心身の不調による転職など、環境と本人が合わないことがあったのかどうかなどを確認するためにお伺いすることがあります。
過去に、学歴や職歴と受診時の病状が離れすぎており、違和感を感じて検査して若年性認知症という10万人に50人くらいの稀な病気を診断したことがあります。
その他の理由:診断書作成のため。
精神科では、
- 傷病手当の診断書
- 自立支援医療の診断書
- 障害福祉手帳の診断書
- 障害年金の診断書
など様々な診断書を診察後に作成することがあります。それぞれの診断書や制度の詳細については下記のページをご参照ください。
これらの診断書には「成育歴」「学歴」「職歴」「生活歴」などの記入項目がございます。
「成育歴」とは、産まれたときの様子や、その後の1歳児健診などで問題がなかったかなどを記入する欄です。
「学歴」「職歴」の記入欄もございます。
「生活歴」とは、学校卒業後、何歳で結婚して、家族構成はどんな感じで、どんな生活を病院に受診するまでにしてきたかなどを記入する欄です。
これらの情報は、さまざまな社会制度を申請する診断書を作る際に必要な情報でもあるため、確認することがございます。
家族構成や学歴などの質問をされると、「え? なんで?」って思うかもしれませんが、理由があって質問していた訳です。でもプライベートな質問を病院でされるとびっくりしますよね。
資格
・日本精神神経学会認定 精神科専門医
・厚生労働省認定 精神保健指定医
・日本医師会認定 認定産業医
・厚生労働省認定 麻酔科標榜医
・日本麻酔科学会認定 麻酔科認定医(2017年~2022年迄)
略歴
愛知県立明和高校卒業後、山梨大学医学部医学科へ進学。卒業後は豊田厚生病院での研修を経て名古屋大学精神科へ入局。その後、大学の関連病院で勤務の後、2022年に大曽根駅前こころのクリニック院長就任。
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