こころの病気では治療期間が長くなるうえ、症状のために仕事が出来なくなっている方もいますよね。そんな中で治療を続けると、どうしても治療代が心配になります。
このような患者さんが治療に専念出来るよう、患者さんのお金の負担を軽くする「自立支援医療制度(精神通院医療)」という制度があります。自治体によって違いもありますが、今回は愛知県名古屋市の例です。
自立支援医療(精神通院医療)とは
自立支援医療とは、こころの病気で治療中の患者さんの社会復帰や社会生活を国が支援してくれる制度です。具体的には治療代について、
- 自己負担分が1割、自治体によっては0割(無料)になる。多くの患者さんは3割負担ですので、1割になるとは、支払いが3分の1になるということです。
- 1か月の治療費の自己負担の上限が設定され、上限を超えた分については無料になります。(※市民税の支払額などによる条件あり)
という制度です。
愛知県における自治体による負担割合の違い。(令和4年7月1日時点)
1割負担になる愛知県の市町村
名古屋市、清須市、あま市、大治町、蟹江町、飛島村、岡崎市
0割負担(無料)になる愛知県の市町村
一宮市、瀬戸市、尾張旭市、豊明市、日進市、東郷町、長久手市、春日井市、小牧市、犬山市、江南市、岩倉市、大口町、扶桑町、稲沢市、北名古屋市、豊山町、津島市、愛西市、弥富市、半田市、阿久比町、東浦町、南知多町、美浜町、武豊町、常滑市、東海市、大府市、知多市、碧南市、刈谷市、安城市、知立市、高浜市、みよし市、西尾市、幸田町、新城市、設楽町、東栄町、豊根村、豊川市、蒲郡市、田原市、豊橋市、豊田市
対象となるこころの病気
対象となるこころの病気は以下の通りです。
ほぼすべてのこころの病気が対象になります。
1か月の自己負担分の上限について
1か月の自己負担の上限は収入や症状によって、0円、2500円、5千円、1万円、2万円、上限なしの6つの違いがあります。それぞれの条件は以下のとおりです。
生活保護世帯の場合
自己負担分はありません。0円です。
市民税非課税(本人または保護者の収入が80万円以下)の場合
1か月の自己負担分の上限は2500円です。2500円を超える分については支払わないで済みます。
市民税非課税(本人または保護者の収入が80万円以上)の場合
1か月の自己負担分の上限は5千円です。5千円を超える分については支払わないで済みます。
市民税が3万3千円未満の場合
1か月の自己負担分の上限はありません。
ただし、病気の症状が「重度かつ継続」に当てはまる場合は、1か月の自己負担分の上限は5千円です。5千円を超える分については支払わないで済みます。
市民税が3万3千円以上、23万5千円未満の場合
1か月の自己負担分の上限はありません。
ただし、病気の症状が「重度かつ継続」に当てはまる場合は、1か月の自己負担分の上限は1万円です。1万円を超える分については支払わないで済みます。
市民税が23万5千円以上の場合
この場合、自立支援医療制度の対象外となり、1割負担になりません。また、1か月の自己負担分の上限はありません。
ただし、病名が高次脳機能障害や認知症、統合失調症、うつ病や双極性障害などの場合と、病気の症状が「重度かつ継続」に当てはまる場合などは、市民税の支払いが23万5千円以上の場合であっても自立支援医療制度の対象となり、1か月の自己負担分の上限は2万円となります。2万円を超える分については支払わないで済みます。上記は現状令和6年3月31日までの経過措置になります。
申請する方法
申請する場合、市役所や区役所の福祉課が窓口となります。
必要な書類を入手する。
まずは申請に必要な書類を、
- 市役所や区役所に直接行って入手する。
- 市役者や区役所のホームページからダウンロードする。
ことで手に入れます。
愛知県の場合は、愛知県のホームページからダウンロードも出来ます。
病院で自立支援医療費(精神通院)用診断書を書いてもらう。
申請に必要な書類を病院に持って行き、自立支援医療費(精神通院)用診断書を主治医の先生に書いてもらいましょう。診断書の料金はクリニックによって異なりますので、通院中のクリニックで確認しましょう。
当院の自立支援医療費(精神通院)用診断書の料金は4800円で、作成日数は10日間程度頂いております。ご了承ください。
こちらが自立支援医療費(精神通院)用診断書です。
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必要な書類を役所に提出する。
必要な書類を持って、市役者や区役所の福祉課へ提出します。
などです。
※必要な書類は自治体や患者さんによって違いがあるため、事前に役所で確認しましょう。
また、手続き後、受給者証がお手元に届くまでに薬局さんをご利用の際には、自立支援医療制度の申請中であることを、薬局さんに毎回お申し出いただくか、申請書の控えをご提示ください。
受給者証を受け取る。
上の写真は愛知県知多市の受給者証のサンプルです。
申請後、無事に行政の審査を通過したら、1か月~2か月くらいで受給者証がご自宅に届きます。
受給者証が届いたあとは、以下の3点セットを毎回通院のときには持って行き、受付ではじめにご提示ください。
当院では、診断書の発行後、3か月以内に
をお持ちいただければ、
受給者証に記載のある有効期間の開始日までさかのぼって、1割負担で計算し直し返金処理を行います。計算に時間がかかる関係で、しばらくお待ち頂くことをご了承ください。
申請中の患者さんは領収書の管理をよろしくお願いいたします。
診断書の発行から3か月を経過しても受給者証をご持参いただけない場合は、さかのぼって返金はいたしかねますので、ご了承ください。
有効期間
受給者証の有効期間は1年間です。
有効期限の3か月前から更新手続きが出来ますので、余裕をもって行いましょう。役所にて更新手続き後、再度認定を受けるまでの期間は患者さんによって異なりますが、念のため1~2か月ほどお時間を見ていただいた方がよろしいかと存じます。
もし有効期限切れを起こしてしまった場合、再度認定を受けるまでの間は公費を受けられず通常の負担額となります。
対象とならないのはどういうとき?
以下のような場合には自立支援医療の対象とならないため注意して下さい。
市民税を23万5千円以上払う収入があるとき。
この場合は自立支援医療の対象外です。
ただし、病気の症状が「重度かつ継続」という条件を満たす場合は、対象となります。
重度かつ継続かどうかは、医師の診断書をもとに行政が判断します。
診断書が行政の審査に通らなかったとき。
医師の作成した診断書を精神保健センターという行政機関の職員が審査します。
審査に通らないと、対象にはなりません。医師になって10年になりますが、いまのところ審査に通らなかったという経験はありませんので、多くの場合は審査に通ると思っていただいて大丈夫です。
こころの病気以外の治療も一緒に受けたとき。
自立支援医療制度は「こころの病気」が対象です。
例えば、かかりつけのメンタルクリニックで風邪薬や花粉症の薬などを一緒に処方された場合に、こころの病気と関係ない薬の料金は対象外になります。
診断書など、保険適応外の費用。
診断書など書類の費用など、自費分の費用は対象にはなりません。
お金の問題ってとっても大事なことだと思います。その一方で病院によっては書類を作る作業が大変なものですから、なかなか教えてくれなかったりするんですよね。
このホームページでは、出来るだけわかりやすく心の病気について説明するよう心掛けていますので、他の記事も是非読んで頂き、病気の理解を深めて頂ければ幸いです。
資格
・日本精神神経学会認定 精神科専門医
・厚生労働省認定 精神保健指定医
・日本医師会認定 認定産業医
・厚生労働省認定 麻酔科標榜医
・日本麻酔科学会認定 麻酔科認定医(2017年~2022年迄)
略歴
愛知県立明和高校卒業後、山梨大学医学部医学科へ進学。卒業後は豊田厚生病院での研修を経て名古屋大学精神科へ入局。その後、大学の関連病院で勤務の後、2022年に大曽根駅前こころのクリニック院長就任。
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