睡眠薬って依存性があるのが怖いイメージです。
薬の進化は目覚ましく、最近はやめるのがラクな睡眠薬もいくつか開発されているんですよ。
今回は、やめるのが昔の睡眠薬よりラクな最近の睡眠薬と、番外編で昔からある不眠に使う漢方について解説します。
睡眠薬は大きく分けると、
- ベンゾジアゼピン系
- メラトニン系
- オレキシン系
の3種類に分けられます。2と3が最近の睡眠薬です。1のベンゾジアゼピン系というのが昔からある睡眠薬で使い続けると依存性があります。依存性のあるベンゾジアゼピン系睡眠薬の減量にはコツが必要です。そのコツについては下記のページをご参照ください。
メラトニン系睡眠薬: ラメルテオン(商品名:ロゼレム)
メラトニンは、脳から分泌されるホルモンです。
メラトニンは1・2の特徴から、明るい日中はあまり分泌されず、夜間は日中の数十倍の量で分泌され、体内時計を調節しています。
メラトニン系睡眠薬のラメルテオンは脳のメラトニン受容体に作用することで不眠を改善します。ラメルテオンが得意とする不眠は、
- 昼夜逆転型の不眠
- 時差ぼけ
- 遅寝遅起き型不眠
といった、寝れるけどリズムが乱れているタイプの不眠であって、寝付けないタイプの不眠(入眠困難型)の改善は苦手とされます。また、効果が出るまに他のベンゾジアゼピン系やオレキシン系の睡眠薬と比べると少し時間がかかります。
オレキシン系睡眠薬: スボレキサント(商品名:ベルソムラ) レンボレキサント(商品名:デエビゴ)
オレキシンは、脳から分泌されるホルモンです。
スボレキサント(商品名:ベルソムラ)もレンボレキサント(商品名:デエビゴ)、このオレキシンの働きを弱めることで、覚醒状態が弱まり、眠気をいざなうというのが特徴です。
今までのベンゾジアゼピン系睡眠薬は、「抑制系」の方を「高めて」眠くする効果を生み出す薬剤でした。一方でオレキシン系は、「覚醒系」を「弱めて」眠くする効果を生み出す新しいタイプの薬剤になります。
スボレキサント(商品名:ベルソムラ)とレンボレキサント(商品名:デエビゴ)の違い。
オレキシンには、オレキシン1受容体とオレキシン2受容体とがあり、スボレキサント(商品名:ベルソムラ)はオレキシン1受容体に結合しやすく、レンボレキサント(商品名:デエビゴ)はオレキシン2受容体に結合しやすいといった違いがあります。
また、スボレキサント(商品名:ベルソムラ)は銀色の丈夫な包装になっていることからわかるように、無包装の状態での安定性はレンボレキサント(商品名:デエビゴ)の方が高いです。安定性が低い薬剤は、包装をとると、湿度を吸収したりしてひび割れてしまったりします。
不眠に使われる漢方:酸棗仁湯、加味帰脾湯、抑肝散
番外編として、最近の睡眠薬ではないですが、昔から不眠の患者様に使われる漢方としては、酸棗仁湯、加味帰脾湯、抑肝散があります。睡眠薬というよりは、心を落ち着かせ、不安を減らすことで眠りやすい状態にするイメージで、軽めの不眠や、睡眠薬を減らしたいとき、睡眠薬の効果を少し増やしたいときなどに当院では使用しています。
それぞれの漢方の使い分けとしては、
酸棗仁湯:心身ともに疲れ切って不眠な方。
加味帰脾湯:体質が弱く、不安、不眠がみられる方。
抑肝散:神経が高ぶって不眠な方。
というような違いがあります。
患者様のご病状やご希望に応じて漢方での治療にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
資格
・日本精神神経学会認定 精神科専門医
・厚生労働省認定 精神保健指定医
・日本医師会認定 認定産業医
・厚生労働省認定 麻酔科標榜医
・日本麻酔科学会認定 麻酔科認定医(2017年~2022年迄)
略歴
愛知県立明和高校卒業後、山梨大学医学部医学科へ進学。卒業後は豊田厚生病院での研修を経て名古屋大学精神科へ入局。その後、大学の関連病院で勤務の後、2022年に大曽根駅前こころのクリニック院長就任。
詳しいプロフィールはこちら》