これは外来で治療をしていると、とてもよく聞かれる質問です。今回はこの質問にうつ病の特徴を踏まえて解説していこうと思います。先に結論から
結論 転職など大きな決断はすべて後回し!


すべて後回しにして、まずは治療に専念してください。
退職・転職・離婚・引っ越し・・・すべてです。
理由 うつ病では思考力が著しく低下している。

うつ病は脳の病気です。うつ病のしくみについては、以下のリンクをご参照ください。
実際にうつ病患者さんの脳を調べた研究では、前頭前野と呼ばれる部位など、脳の一部で著しい血流低下も確認されています。
そして、うつの症状として、
- 思考力低下
- 集中力低下
- 記憶力低下
- 物事を否定的に考える。
- 自分を責めやすい。
といった特徴があります。
このような状態では、物事をしっかり考えられません。
物事をしっかり考えらない状態では、
- 退職
- 転職
- 離婚
- 引っ越し
などの、うつ病の真っ最中にした決断を、うつ病が治ってから後悔しても、元に戻せないような大きな決断は避けることが望ましいです。
いつまで後回しにするの?

うつの症状(気分の落ち込み、不眠、意欲低下、食欲低下など)が改善するまでです。
抑うつ症状が改善し、しっかり考えられるようになってから退職など人生の上での大きな決断は行うようにして下さい。
うつ病になったばかりの頃の

もう辞めたい・・・
という判断は、うつ病の影響を受けています。
うつの症状が改善してからも、あなたがそのように考えるなら、それはあなたの考えとして尊重できると存じます。

抗うつ薬を飲んでいても、抑うつ症状が改善していれば、考えはじめて良い時期です。ポイントは「うつ症状が改善するまで、考えない」です。
このホームページでは、出来るだけわかりやすく心の病気について説明していますので、他の記事もぜひ読んでいただき、病気の理解を深めてもらえれば幸いです。
- DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き:アメリカの、こころの病気の統計をとるための教科書です。
- カプラン臨床精神医学テキスト第11版:精神科医のバイブルの教科書の一つです。非常に詳しく精神疾患について解説してあります。
- 日本精神神経学会専門医認定試験問題集解答と解説第1集:日本精神神経学会が発刊している専門医認定試験対策の問題集です。こちらの内容を今回の投稿では参考にしています。

資格・所属学会
精神科専門医 / 精神保健指定医(厚生労働省) / 日本医師会認定産業医 / 麻酔科標榜医 / 麻酔科認定医(2017年~2022年)・日本精神神経学会 / 日本ADHD学会
略歴
愛知県立明和高校卒業後、山梨大学医学部医学科へ進学。卒業後は豊田厚生病院での研修を経て名古屋大学精神科へ入局。その後、大学の関連病院で勤務の後、2022年に大曽根駅前こころのクリニック院長就任。
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